白猫のメモ帳

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マネジメントについて考えてみる

マネージャーという立場になって1年半が経ちました。
マネジメントというものを理解したともとても思わないし、1年、半年、いや1ヶ月後にはまた考えが変わっているかもしれないけれど、一度自分の思うマネジメントという仕事を言語化して整理してみたいと思ったので取り留めもなく書いてみようと思います。

マネジメントを知ったからマネージャーになるわけではない

マネージャーを初めて担当するにあたって、マネジメントとは何か、マネージャーの仕事とは何かというのを理解している人はほとんどいないのではないでしょうか。

幸いなことに悟りを開いた上司に「君が次になるマネージャーというものはこういうものなんだ」と正しく教えられ、正しく理解して初めてマネージャーになったのならばそうではないのかもしれません。
でもきっとそんなことはそう滅多に起こり得ないでしょう。

よくわからないけれどマネージャーという立場になり、よくわからない責任とよくわからない仕事が増えただけで、自身の本来の役割は一体何なのかがさっぱりわからないまま仕事をしている。
あるときふと「結局マネジメントとは一体何なんだろうか」と思い至り、頭を悩ます。
これがマネージャーがマネジメントとは何かを哲学し始める瞬間なのではないでしょうか。
(いや最初に研修とかを受ければそういう発想になるんですかね…)

もしくは頭を悩ませるわけでもなく、目の前のやらなくてはならないことにひたすら取り組んでいるだけのこともあります。
不思議なことにやらなくてはいけない仕事は無限にあるのです。
それが本来マネージャーとして自分がやらなくてはならないことであるかどうかを別とするならば…。

マネジメントとは何なのか

マネジメントは管理であり、マネージャーは管理職である。
間違ってはいないけれど正しくもないかなと思っています。

辞書を引くと「manage」は「管理する」「制御する」という意味もあるけれど、それよりも「(難しいことを)なんとかする」といったニュアンスが本質に近い気がします。「管理する」はどちらかというと「control」でしょうか。

マネジメントとは何かを一言で正確に言い表すことは難しいです。ドラッカーのマネジメントはまさにマネジメントについてそのものの話なので、少なくともちゃんと本1冊分はあるわけです。
まぁ確かに「なんとかする」を詳しく説明するのにそんなに短いわけがないのですが、あえて言うならばこの一文を引用したいところです。

マネジャーを見分ける基準は命令する権限ではない。貢献する責任である。権限ではなく、責任がマネジャーを見分ける基準である。

これはかつてのマネージャーの定義からの変化という文脈においての内容です。ここではマネージャーと専門家が対比されています。

マネージャーと専門家について

専門家は「組織の成果に責任を持つ者」のうち、基本的に一人で仕事をする人を指します。
エンジニアでいえばスペシャリストとかIndividual Contributorあたりになるでしょうか。

組織の目標を専門家の用語に翻訳してやり、逆に専門家のアウトプットをその顧客の言葉に翻訳してやることもマネジャーの仕事である。言い換えると、専門家が自らのアウトプットを他の人間の仕事と統合するうえで頼りにすべき者がマネジャーである。専門家が効果的であるためには、マネジャーの助けを必要とする。マネジャーは専門家のボスではない。道具、ガイド、マーケティング・エージェントである。

専門家は、マネジャーの上司となりうるし、上司とならなければならない。教師であり教育者でなければならない。自らの属するマネジメントを導き、新しい機会、分野、基準を示すことが専門家の仕事である。この意味において、彼らは自らのマネジャーよりも、さらには組織内のあらゆるマネジャーよりも高い立場に立つ。

大変ごもっともです。
専門家はマネージャーの助けを必要とするが、マネージャーは専門家のボスではなく、専門家とマネージャーは互いをフォローし、リードする。
とても素晴らしいと思います。専門家だけでチームを作ることが現実的でないことと、優秀な専門家がマネージャーになることを除けば…。

結局ネックはここで、基本的にマネージャーが足りないので優秀な専門家の中からマネージャーを立てる。
そうするとマネージャーは専門家よりも専門家なので専門家は専門家でなくなる。(何言ってるかわからない)
マネジメントができるエンジニアは大抵両方できるってイメージですが、さすがに偏見ですかね…。

マネージャーの仕事

さて、マネージャーの仕事です。

自らの仕事を主体的に知ることは、個々のマネジャー本人の責任である。彼に期待すべきことは、自らの職務を書き表し、彼自身ならびに彼の部門が責任を負うべき成果と貢献について提案し、他との関係を列挙し、必要とする情報と他に貢献できる情報を明らかにすることである。これらのことについて考えることが、マネジャーにとっての最大の責任である。マネジャーたるものは、この責任から逃れることはできない。

これはとても手厳しいです。マネージャーには期待が与えられ、成果と貢献の責任を持ちます。マネージャーは自分の仕事を自分で考えなくてはならず、自らの仕事を「考える」ことにリソースを割く責任があるわけです。
とてもとても目の前のやらなくてはならないことにひたすら取り組んでいる場合ではありません。

あらゆるマネジャーに共通の仕事は五つである。①目標を設定する。②組織する。③動機づけとコミュニケーションを図る。④評価測定する。⑤人材を開発する。

事業を定義することは難しい。苦痛は大きく、リスクも大きい。しかし事業の定義があって初めて、目標を設定し、戦略を発展させ、資源を集中し、活動を開始することができる。業績をあげるべくマネジメントできるようになる。

目標には、はじめからチームとしての成果を組み込んでおかなければならない。それらの目標は、常に組織全体の目標から引き出したものでなければならない。

戦略とは、「われわれの事業は何か、何になるか、何であるべきか」との問いへの答えである。組織構造を決めるのは、この戦略である。戦略が組織の基本活動を決める。

事業の定義があり、目標を設定し、戦略を発展させるとマネジメントができる。
そして、自身がマネジメントする組織の目標は上位の組織全体の目標から設定する必要がある。
目標が決まり、戦略が決まり、組織構造が決まってようやく「どうやって」に繋がっていく。

ここを見逃してしまうととても辛いことになりますね。
何をなんとかするのかわからないのに、なんとかすることなんてとてもできないです。

目標と戦略

さて、目標と戦略についてはもう少し掘り下げたいので今度は良い戦略、悪い戦略という本から引用をしましょう。

必要なのは目前の状況に潜む一つか二つの決定的な要素──すなわち、こちらの打つ手の効果が一気に高まるようなポイントをみきわめ、そこに狙いを絞り、手持ちのリソースと行動を集中すること、これに尽きる。

ところが多くの人は、戦略を単なる謳い文句のように受けとることに慣れきってしまい、リーダーが声高にスローガンを掲げ、ひどく景気の良い目標をいくつも挙げて「これが戦略である」と言っても、すこしも驚かなくなってしまった。

目標をあまりたくさん設定しても大抵は結局どれも達成できません。選択と集中というやつです。
ただし列挙することには意味があります。1つしか思い浮かばなかった目標と、10個のうちから1個だけ選んだ目標は明らかに異なります。どれも目指してはいるけれど行動していない目標に意味はありません。

良い戦略は、目標やビジョンの実現以上のことを促す。良い戦略は、直面する難局から目をそらさず、それを乗り越えるためのアプローチを提示する。状況が困難であるほど、行動の調和と集中を図り、問題解決や競争優位へと導くのが良い戦略である。

良い戦略には、とるべき行動の指針がすでに含まれている。こまかい実行手順が示されているわけではないが、やるべきことが明確になっている。「いま何をすべきか」がはっきりと実現可能な形で示されていない戦略は、欠陥品と言わざるを得ない。

かっこいいけれど実現方法が存在しない目標にも意味がありません。思い浮かんでないだけで実現できるかもしれない目標には意味があります。でも、具体的な戦略に落とせない目標をそのまま目標として持っていても意味がありません。目標と戦略はセットです。

ちなみに個人の目標設定の話については以前記事を書いているので、気になったらこちらも見てみると良いかもしれないです。手段だけを書いてもダメだし、目標だけを書いても意味がない。目標と戦略を書こう。

リーダーとマネージャーについて

さてさて。ここまでマネジメントとマネージャについて書いてきましたが、困ったことが一つあります。
それはマネジメントとリーダーシップ、マネージャーとリーダーの役割の違いです。

ざっくりといえばマネジメントは「How」に主眼を置き、リーダーシップは「What」に主眼を置きます。
何をすべきかを考えるのがリーダーシップで、どうやって実現するかを考えるのがマネジメントです。
組織のトップはリーダーで、それを支えるのはマネージャーです。なるほど。

ただしそう考えるとよくわからないことがあります。
マネージャーの仕事の「目標を設定する」はマネジメントではないのでしょうか。
組織全体の目標を自らのマネジメントする組織の目標に落とし込む際、それは「How」を考えるマネージャーが行うのでしょうか。「What」を考えるリーダーが行うのでしょうか。相反する場合にはどうするのでしょうか。

マネージャーのいる組織におけるチームリーダーとは一体どういった役割なのでしょう。
マネージャーとしてマネジメントとリーダーシップを両方発揮する他なく、リーダーは確かにチームをリードする立場ではありますが、リーダーシップを発揮して何をするか決める人になるのはなかなかに難しいです。
マネージャーが組織の成果に責任を持ち、専門家が個人の成果に責任を持つならば、リーダーは何に責任を持つのでしょう。

エンジニアのためのマネジメントキャリアパススタッフエンジニアあたりを参考にする限りでも、リーダーはマネージャーの横に並ぶというイメージを持ちます。互いにリスペクトし、助け助けられる存在のようです。

マネジメントをするのがマネージャーで、リーダーシップを発揮するのがリーダーというのがやっぱり違うのでしょうか。
結局はどちらも持ち合わせている必要があり、ただし担当する役割は異なるというのが一番しっくりくる気がしますがはたして…。
このあたりはまた考えがまとまったらアウトプットしてみたいですね。

まとめ

最初に取り留めもなくと書いた通り、何となくこんなことを思い、こんなことに悩んでいるというだけの文章です。
今回の内容はあくまでマネジメントとは何であるかであり、どのようにマネジメントをするべきかについては触れていません。あえてポイントをまとめるならこんなところでしょうか。

  • マネジメントの仕事は「なんとかする」ことであり、組織の成果に責任を持つことである
  • マネージャーは自分の仕事が何であるか常に考えなければならない
  • マネジメントする組織に目標を設定する必要があるが、それは上位組織の目標から設定しなければならない
  • 目標を元に戦略を設定しなければならない 目標だけあってもそれを実現するための戦略がなければ意味がない

自分がうまくマネジメントができているなんてとてもとても言えません。
それでも、たったこれだけの文章をまとめるだけでもあーでもないこーでもないと思い直し、本を読み返しました。
書く前よりもきっと少し考えが整理されたような気がします。(そして疑問や混乱も増えた…)

自分がマネージャーに向いているとはあまり思っていません。向いていないとも思っていません。
世の中のエンジニアがみんなマネージャーに向いているなら私はきっとマネージャーをやっていないと思います。

それでも自身の責任と自身の仕事を常に考えるのがマネジメントの仕事であるならば、その立場にいる限りはその責任を果たさないといけないですね。そしてまた気が向いたときに何かを書いてみようかな…なんて。

P.S. 中間管理職というのはまたなんとも微妙な役割です。それはマネジメントでもリーダーシップでもない中間管理職というよくわからなさがあります。はじめての課長の教科書あたりはここにフォーカスしていて結構面白い本です。私は新版のあとがきの内容が結構気に入っています。