「システム」というワードが最近ちょっと引っかかっているので、まとまりきっていないですが書いておこうと思います。
現代の企業において、デジタル技術はビジネスの中心的な役割を担っています。
業界によってもその進み具合は異なりますが多くの企業がデジタル化を進めていて、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉も頻繁に耳にしますね。
パッケージソフトの導入やSIer(システムインテグレーター)によるシステム開発など、いわゆるアウトソーシングの形でデジタル化を行う企業も多いですが、一方で企業がその企業たるためのコアなシステムを内製することも最近は増えてきています。
こういった企業ではシステムを担当する組織を設けたり、システム専門のグループ会社を設立するなど、いわゆるシステムの専門家を企業の内部に置くという手段を取ります。
ちなみに、ソフトウェアファースト第2版 あらゆるビジネスを一変させる最強戦略においては「手の内化」というワードが使われていますね。
システムとは何なのか
さて、ここまでの文章の中でも何度か「システム」という言葉が出てきましたが、改めてその意味を考えてみましょう。
「システム」という言葉はかなり抽象度の高い言葉で、その意味は多岐にわたります。
系、制度、方式、機構などさまざまな訳を充てることができますが、これらに共通するのは「複数の要素が互いに影響を及ぼす集合」ということです。
システムとは、何かが集まったものです。人でも、細胞でも、分子でも、何であっても、時間の経過とともにその独自のパターンを創り出すようなやり方で相互につながっている何かが集まったものです。
システムとは、「複数の要素が情報やモノ、エネルギーなどの流れでつながり、相互に作用し合い、全体として目的や機能を有する集合体」です。
改めて考えてみれば当たり前のことではあるのですが、「システム」という言葉がデジタル技術やコンピュータに限定されるものなのかというと、そうではありません。デジタル化が進むもっとずっと前から「システム」は存在しているわけです。
ところが最近のビジネスの場においては「システム」という言葉は「コンピュータシステム」とイコールのように扱われがちで、いかにしてソフトウェアを開発・導入するのかという点にばかり目が行っているように思えてしまいます。
システム部門の役割
では、企業におけるシステム部門の役割を改めて考えてみます。
シンプルに言えば、目的を達成するための仕組みやプロセスを作り、維持するといったところでしょうか。
システム部門の本来の役割は、単にソフトウェアを開発・導入することではなく、企業全体の「仕組み」を整備したり見直すことです。
この「仕組み」というのは、企業の業務フロー、組織間のコミュニケーションの方法、リソースの配分方法、業務を最適化するためのルールなど実に多くの要素があります。
ソフトウェアが現代のビジネスにおいて重要であることは間違いありませんが、良くない仕組みをどんなに頑張ってソフトウェアにしても良いシステムにはならないわけです。
ここを見誤って「なぜこの仕様かはわからないけど仕様通りです」というような開発をしてしまうと、せっかくのシステムがうまく機能しないことになりかねません。
全部システムかもしれない
システムは「複数の要素が互いに影響を及ぼす集合」ということを書きました。
AをするとBが起こり、結果としてCになる。つまりこれは立派なシステムです。これを「A→B→C」と表現しましょう。
組織変更を例にすれば「組織変更をする→組織の役割が明確になる→各組織が成果をあげやすくなる→企業全体のしての成果が増大する」などが考えられるでしょう。もちろんあくまで一例ですし、そう簡単に行けば苦労はしないのですが。
会社員という仕組みももちろんシステムです。
「仕事をする→価値が生まれる→価値にお金が払われる→会社が利益をあげる→報酬が支払われる」みたいなことですね。何故かはわからないけれど、お仕事をするとお金がもらえるというわけではないのです。
そう考えると仕事におけるありとあらゆることがシステムであると言えるかもしれません。
Cの結果を得るためには、どんなBが起こる必要があり、そのためにはAである何をすればいいのか、このストーリーを作ることがまさしくシステムを作るということに他なりません。
もちろん現実的には会社のシステムのすべてをシステム部門が作るわけではありません。適切な役割分担は必要でしょう。
ただ、「システム」の名を冠する以上は世界の複雑さをシステムとして捉える視点、つまりシステム思考を忘れないようにしたいものです。